2011年11月14日

膨らむ宇宙の結末(一千億年後) 朝日新聞10月31日朝刊から

アインシュタインも考えつかなかった。今年のノーべル物理学賞に決まった3氏の観測は、宇宙が膨らむスピードを上げていることを示していた。このままだと空間が引き裂かれてバラバラになるのか。宇宙の未来をハワイのすばる望遠鏡が占おうとしている。

137億年前、ビッグバンで生まれた宇宙は、誕生直後に激しく広がったあと速度をゆるめ、星や銀河ができて今の姿になった・・・。東京大の佐藤勝彦名誉教授らが唱えた「インフレーション宇宙論」だ。宇宙のこれまでをめぐる、科学者たちのおおかたの理論でもあった。 広がり方はどう変わったのか。受賞の決まった米ソール・パールマター博士、豪ブライアン・シュミット博士、米アダム・リース博士は1980年代から、1a型と呼ばれる超新星を多く観測し、どのくらい遠くの銀河がどれくらいの速さで遠ざかっているのかを調べた。

宇宙で遠くを見ることは、昔の姿を見るのと同じ。その結果、近くの銀河が思ったより速く遠ざかっていることが分かった。1998年、「宇宙の膨張は徐々にゆるやかになっていたが、70億年前ほど前から加速に転じた」と報告した。本来なら、星などの物質がもつ重力で、宇宙の膨張は止まったり、縮み始めたりしてもおかしくなかった。「アインシュタインの相対性理論がそれまでの常識を覆してから1世紀。またもや物理学は根底からひっくり返った」。東京大数物連携宇宙研究機構(IPMU)の村山斉機構長は語る。

真上にボールを投げたのに、落下どころか、ボールはどんどん早まりつつ上に向かって遠ざかってゆく。加速膨張の発見はそれくらいの衝撃だった。

膨張が速まっているなら、宇宙はこれからどうなるのか。村山さんによれば、まず、銀河と銀河の間がどんどん間延びして、私たちの天の川銀河は独りぼっちになる。ここまでは決定的だ。宇宙が縮んでつぶれる可能性はなくなった。速まり方によっては、銀河もバラバラになる。太陽系はもちろん、地球も形を保てずに大気がはがれ、私たちの体をつくる原子どおしも光より早く離れていく。ついには空間すら引き裂かれて宇宙は終わる。IPMUの高田昌弘特任准教授の計算だと、「最も早ければ、その瞬間は今から一千億年後」だ。

観測が事実なら重力に逆らって宇宙を広げる何らかの力があると考えるしかない。計算すると、そんな力を生む未知の「暗黒エネルギー」があり、その量は宇宙全体の73%を占めることが明らかに立ってきた。残るうち、23%は重力をもつものの、やはり謎につつまれた「暗黒物質」だ。星や人間といった物質は4%しかない。

以上、記事からの抜粋です。来年ハワイのすばる望遠鏡に高性能、高視野の新型カメラを使い、暗黒物質、暗黒エネルギーの調査を続け仮説の真偽を調査する、とのことです。我々凡人には理解を超えるすごい話ですね。

さて、人間が積み上げてきた知識、科学は、大きく進展しています。人間の能力をはるかに超える計算力のコンピュータを使って膨大な計算をし、宇宙の現象を詳細に調べ、分析して、いろいろな仮説を打ち立て、そしてその実証が行われています。これだけの進歩を遂げている人類にとっても、96%が未知の暗黒物質、暗黒エネルギーだということは、やはり自然のすごさ、大きさにはおよびません。生命、自然環境やはり「神」の世界なのでしょうか。

我々が受けた「生」、地球環境というものは、あたり前にあるのではなく、非常に多くの偶然が重なり、微妙なバランスの中で、稀な幸運にめぐまれた一瞬あり、それは失ってしまえば、再生することが非常に困難なのです。尊い生を受けた幸せを万物に感謝し、慈しみをもって精一杯、限られた生を全うすること、そして次世代に貴重な環境を残すことが大事なことで、今を生きる我々の義務である、と思います。

壮大な話になってしまい恐れ入ります。現実には、一日一善を心がけ、諸物に思いやりをもって、今を大切に楽しく生きられれば、と思います。